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ひふみよ 小沢健二コンサートツアー@中野サンプラザ2010/5/24

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言いたいことは星の数ほどあった。でも、観終わって、一言で言い尽くせる気もする。「ありがとう」と。心から。

ひふみよ 小沢健二コンサートツアー 二零一零年 五月 六月 @中野サンプラザ 5/24

小沢健二(vo,g)中西康晴(pf)沖祐市(org)北原雅彦(tb)GAMO(ts)NARGO(tr)木暮晋也(g)真城めぐみ(cho)及川浩志(per)中村キタロー(b)白根佳尚(ds)

私は、loversのライブ以来、ほぼこのメンバーでのライブとしてはレビュー96以来の小沢健二だ。14年ぶりだ。でも、「ほぼこのメンバー」と言っても、肝心なひとりがいない。青木達之の不在は、私には、それは大きかった。14年前と何事もなかったかのようにつながっているように感じられるコンサートであっただけに、青木がいないのは、思いの外、寂しかった。それが、彼が公に姿を現さなくなった、この13年間という時間の重みなのだ。それは、小沢健二自身が一番わかっているのだろうけど。

客席は、おそらくほぼ全曲をそらで歌える連中の集まり。私を含め。しかし、黄色い歓声の少女達も、十数年分の齢を重ねて、今に至ってる。だから、「小沢く~ん」というような声は、思いの外、少なかった。ここにも、「王子様不在の時代」を寂しく複雑な感情で過ごした13年が色濃く表れていたと思う。今日は、東京初日。ツアーも終盤に来れば、恐らく、ファンの歓声はかつてのように、そう、かつての少女達は今も少女であることを取り戻し、黄色い声に溢れるのだろうけど、まだ今日は、あまりに久しぶりの帰還が、まぶしすぎたのだ。

それに、彼ほど、つれない王子様も、なかなかいない。遠い星に行ってしまった人。だから、あきらめきれないが、でも仕方ないのかも・・・というような初恋の終わりをとうに迎えていたはずだった。私を含めて。思い出だけでも十分に美しかったので、それはそれで、そういうことなんだろうって、大人になって、小沢健二の思い出は、ずっと私達の中にあった。あきらめきれぬ何かが、わだかまりのように残り続けたのは確かなのだけれども。こんな素晴らしい才能を持っているひとはそうはいないのに、その彼が、僕らの前から姿を消し、黙って何処かに行ってしまい、便りも寄越さず、元気なのか、大丈夫なのかすら、よくわからない。断片的に入ってくる情報は、彼が、やはり遠いところに行ってしまったということを確認させるものだったし。

だから、今日の公演で、詩の朗読や新曲や改作などで、やっぱり彼は難しい処にいるのかも、などと、凡人のこちらは思う瞬間が幾つかあっても、そんなことは小さなことにしか思えなかった。小沢くんには、私達は、長いこと、傷つけられてきたのだから。そういう人だって、判っているのだから。

今さら、よく、戻って来れたね。しあわせの絶頂に、突然、何も言わずに出て行って、こんなに長い間、留守にして。心配かけて。苦しめて。・・・みたいな。ファンは、勝手だからな。でも、そう思う面だってある。信じられない。戻って来てくれたことが。

このライブ、このツアーが、みんなが本当に愛している曲がしっかりとちりばめられ、Disco To Go(94)、The Life Show(94)、village(95)、レビュー96(96)、lovers(96)の次に来るツアーであるということに、全く違和感がないことには、本当に、何とも言えない思いで一杯になってしまう。今年は、(2010)だというのに。時間がひとっ飛びしたかのようだ。

でも、俺たちは、この13年の間に、ものすごくいろんなことがあって、それは彼もそうだろう。しかし、そうやって時間は続いているのだ。

今日、彼が詩の朗読で言っていたことで、一番嬉しかったのは、「大衆音楽の作り手であることを誇りに思う」というような一言だ。それに、やっと気づいてくれたんだ・・・と。そういうことをオザケンが軽視していることは、実は、ある大衆音楽の大作曲家が残念がっていたという情報を人づてに聞いていたり、そして、彼のこれまでの行動から類推は出来た。だから、13年を経て、いよいよ気がついてくれたのだというような思いで、複雑な気持ちだけど、嬉しかったんだ。だって、俺たちは、大衆音楽家としての小沢健二が唯一無二最高の存在だと、ずっと誇りに、そう、誇りに思ってきたんだから!

何度も泣きそうになった。実際、何度か泣いたけど、それがどの場面でだったか、よく覚えていない。どこで泣いたっておかしくないじゃないか。・・・流れ星ビバップ。天使たちのシーン。夢が夢なら。強い気持ち・強い愛。痛快ウキウキ通り。さよならなんて云えないよ。ある光。愛し愛されて生きるのさ。・・・泣くじゃないか。

二度と戻らない美しい時にいると、気づいていた彼が、新しい、美しい時に、連れてきてくれたのだと、思っている。そして、毎日は、つづいていく、のだ。

感謝しかない。

そして、青木達之の告別式に、弔辞として彼が寄せた言葉、「借りは返す。」、今日まで忘れたことはなかった。・・・返されていないと思っていたから。・・・でも、今、思う。借りは返されたと。こういう返し方もあるんだって、教わった。ありがとう。・・・そのことを彼に伝えると同時に、岡崎京子さんがいらしてたことも、彼に報告したいと思う。そして、彼に代わって、御礼を言いたい。

素晴らしい夜だった。

拾いものセットリスト

01 流れ星ビバップ
◆ 朗読01
02 ぼくらが旅に出る理由
◆ 朗読02
03 天使たちのシーン
04 苺が染まる【新曲】
05 ローラースケート・パーク/
 東京恋愛専科・または恋は言ってみりゃボディーブロー
06 ラブリー …のコーラスの練習
◆ 朗読03
07 カローラⅡにのって
08 痛快ウキウキ通り
09 天気読み
10 戦場のボーイズライフ
11 強い気持ち強い愛
12 今夜はブギー・バック
◆ 朗読04
13 夢が夢なら
14 麝香
◆ 朗読05
15 シッカショ節【新曲】
16 さよならなんて云えないよ~メンバー紹介
17 ドアをノックするのは誰だ
18 ある光(弾き語り)
19 時間軸を曲げて【新曲】
20 ラブリー
21 流れ星ビバップ
アンコール
22 いちょう並木のセレナーデ
23 愛し愛されて生きるのさ

「◆ひふみよ 小沢健二コンサートツアー 二零一零年 五月 六月 @中野サンプラザ 5/24」
掲載元:http://kznriwst.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/524-c6e4.html


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